昨今様々な媒体で問題視されている特定外来種による生態系の破壊の問題。今回は特定外来種に指定されている魚類について一覧にまとめました。魚種以外にも定着・未定着の情報や原産地、侵入経路、被害例などをまとめてご紹介させて頂きます。
特定外来生物とは
まず、特定外来生物の定義についてですが、海外起源の外来種であり、日本の生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものを指します。生きているものに限られ、個体だけではなく、卵、種子、器官なども含まれます。
こちらに指定された特定外来種は生きたままの運搬が禁じられており、もし特定外来種を放流するなどの行為を行った場合、この防除に必要な費用の一部又は全部を負担する場合が発生します。
バス釣りをする方や、特定外来種に指定される前からすでに対象の魚をペットとして飼われていた方などは、外来生物法は必ず知っておくべき法律となります。
特定外来種に指定された魚類一覧
オオクチバス (日本全国に定着)
サンフィッシュ科オオクチバス属。北アメリカ南東部の固有種。侵入経路は、1925年にゲームフィッシング用の魚として持ち込まれたのが最初と言われている。成体で60cm程度の大きさになる。食欲旺盛な肉食性で、小型の魚類から水生昆虫・カニやエビなどの甲殻類、時にはカエルやネズミ、小型の鳥類まで飲み込んでしまう悪食。また、繁殖力が非常に高く、一つの巣穴で卵1万個に達するともいわれている。在来種の生態系を壊す存在として特定外来種に指定されている。
コクチバス (福島，栃木，長野，滋賀，奈良などで定着)
サンフィッシュ科オオクチバス属。北米大陸中東部の固有種。オオグチバスよりも寒冷な水域に分布する傾向がある。成体で30cm-50cm程度の大きさになる。侵入経路は、オオグチバスと同様に1925年に持ち込まれたが定着せず、1990年頃から定着したと考えられている。ブラックバス同様、食欲旺盛な肉食性で、小型の魚類から水生昆虫・カニやエビなどの甲殻類などを捕食する。また、繁殖力が非常に高く、一つの巣穴で卵1万個に達するともいわれている。在来種の生態系を壊す存在として特定外来種に指定されている。
ブルーギル (日本全国に定着)
サンフィッシュ科ブルーギル属。北アメリカ東部原産。侵入経路は、1960年に当時の皇太子がアメリカのシカゴ市長から寄贈され持ち帰り、食用研究対象として生育された後放流された。雑食性で、昆虫類、植物、魚類、貝類、動物プランクトンなどをなんでも捕食してしまう悪食。成体で全長25cm程度の大きさになり、１回の産卵数は21,000～36,000粒とも言われている。在来種の生態系を壊す存在として特定外来種に指定されている。
コウライギギ (霞ケ浦を含む利根川水系に定着)
ギギ科ギバチ属。東アジアに広く分布。詳しい侵入経路は不明で諸説あり（観賞用もしくは食用として輸入されたものが放出された等）。主に甲殻類や底生小型魚類を捕食する。成体で全長10~20cm程度の大きさなる。在来種の捕食に加え、在来の同属種との交雑も見られる為、生態系を壊す存在として特定外来種に指定されている。
カダヤシ (東北を除く全国に定着)
カダヤシ科カダヤシ属。北アメリカ原産。和名のカダヤシは「蚊絶やし」という意味から由来し、その名の通り蚊の幼虫ボウフラ駆除を目的として1916年に輸入された。雑食性でプランクトンや小型の水生昆虫、魚卵、稚魚、糸状藻類を捕食する。特に同様の生態を有するメダカの稚魚などを襲い、メダカの生息域への侵略が危惧されている。
オオタナゴ (利根川水系周辺、関東地方に定着)
コイ科タナゴ属。中国、朝鮮半島、アムール川、ベトナムなど広く分布。侵入経路は不明だが、2001年に茨城県で確認されて以来関東を中心に定着している。全長20㎝程度と在来のタナゴより大型になり、在来タナゴを駆逐している可能性がある。また在来種との交雑による影響も大きいと考えられている。雑食性。
チャネルキャットフィッシュ (利根川水系の関東地方、琵琶湖（滋賀），島根県，福島県，岐阜県，愛知県，群馬県)
イクタルルス科イクタルルス属。原産地北アメリカ。1971年カリフォルニアから食用として輸入された。大きい個体で100cmを超えるものも確認されている。肉食性が強く、甲殻類、貝類、小魚，カエル等を捕食する。
ナイルパーチ (国内未定着)
アカメ科アカメ属。アフリカ大陸ナイル川流域に広く分布。日本では観賞魚として流通しているが、国内では現時点で未定着。イギリスでの大きな生態系破壊の事例から、「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選ばれ、日本でも特定外来種として指定されている。最大約2m、200kgという個体も計測されている巨大魚。肉食性で、小魚や甲殻類などを大量に捕食する。
ガー科の全種 / ガー科に属する種間の交雑により生じた生物 (国内未定着)
ガー科ガー属。 原産地は北米中～南部のメキシコ湾に注ぐ水系。侵入経路は、鑑賞目的で飼育されていた個体が放出され、各地に分布したと考えられている。大きな個体で2mを超える大きさになる。魚や時にカメや水鳥を襲う肉食性で大型の個体になれば大食漢となる為、在来種を多く捕食してしまい、生態系を壊す存在として特定外来種に指定されている。
ブラウンブルヘッド (国内未定着)
イクタルルス科アメイウルス属。北米大陸東部に広く分布。国内では現時点で未定着ながら、外国では在来種を駆逐する例がいくつも報告されている。50cmほどまで大きくなり、環境の変化に強く、肉食性が強く地域によっては魚卵を主に食べている。
フラットヘッドキャットフィッシュ (国内未定着)
イクタルルス科ピロディクティス属。カナダ南部からメキシコにかけて広く分布。国内では現時点で未定着ながら、アメリカでは外来魚で最も悪影響が大きい種と言われるほど在来種への影響が大きいと考えられている。全長150cmほどまで成長する個体も確認されている。
ヨーロッパナマズ（ヨーロッパオオナマズ） (国内未定着)
ナマズ科ナマズ属。ヨーロッパ（東欧,中欧）、西アジアなどにかけて広く分布。国内では未定着ながら全長が1~2m、5mほどになった個体も確認されており、魚類や甲殻類だけでなく鳥類などの捕食も行う大食漢で生態系への影響が懸念されている。淡水魚最大の種目と考えられている。
カワカマス科の全種 / カワカマス科に属する種間の交雑により生じた生物 (国内未定着)
カワカマス（パイク）科カワカマス（パイク）属。北アメリカ、ヨーロッパ、アジア北部原産。国内未定着ながら全長150cmほどと大型になる魚食性淡水魚で、イギリスなどで在来生物相に被害を与えた事例がある為、危険視されている。冬の低水温にも耐えることができるので、日本にも定着できる可能性が高い。
ラウンドゴビー (国内未定着)
ハゼ科ネオゴビウス属。アゾフ海、黒海、カスピ海流域などが原産。国内未定着ながら在来生物の捕食・競合のおそれがあるとして、特定外来種に指定されている。
ホワイトパーチ (国内未定着)
モロネ科モロネ属。アメリカ北東部からカナダ南東部の沿岸地域原産。国内未定着ながら在来生物の捕食・競合のおそれがあるとして、特定外来種に指定されている。
ホワイトバス (国内未定着)
モロネ科モロネ属。北米東岸原産。国内未定着ながら、全長45cmほどに達し、魚類や甲殻類、水生昆虫などを捕食する為、在来生物の捕食・競合のおそれがあるとして、特定外来種に指定されている。冬の低水温にも耐えることができるので、日本にも定着できる可能性が高い。
ストライプトバス (国内未定着)
モロネ科モロネ属。北米の大西洋岸，カナダのセントローレンス川流域原産。国内未定着ながら、全長2mに達する個体も確認される大型の肉食魚で在来生物の捕食・競合のおそれがあるとして、特定外来種に指定されている。
ホワイトバス×ストライプトバス (国内未定着)
モロネ科モロネ属。ホワイトバスとストライプトバスとの雑種「サンシャインバス」ともいわれる。
ラッフ (国内未定着)
パーチ科ギュムノケファルス属。イギリスからロシア、中国までのユーラシア大陸原産。国内未定着ながら在来生物の捕食・競合のおそれがあるとして、特定外来種に指定されている。
ヨーロピアンパーチ (国内未定着)
パーチ科ペルカ属。イギリスを含むヨーロッパからシベリアにかけて広く分布。国内未定着ながら体長50cmほどに達する大型の肉食魚で在来生物の捕食・競合のおそれがあるとして、特定外来種に指定されている。オーストラリア、スペインなどで在来生物への影響が確認されている。
パイクパーチ (国内未定着)
パーチ科サンデル属。ヨーロッパ中～東部，西アジア原産。国内未定着ながら体長30cm~70cmほどの大型肉食魚で在来生物の捕食・競合のおそれがあるとして、特定外来種に指定されている。西ヨーロッパや北アフリカでは在来のパパイク類やコイ科魚類が激減するなどの被害が確認されている。
ケツギョ(国内未定着)
ケツギョ科ケツギョ属。中国，アムール川水系原産。国内未定着ながら全長70cmの大型肉食魚で在来生物の捕食・競合のおそれがあるとして、特定外来種に指定されている。
コウライケツギョ (国内未定着)
ケツギョ科ケツギョ属。中国、朝鮮半島、ベトナム原産。国内未定着ながら全長30cmほどの肉食魚で在来生物の捕食・競合のおそれがあるとして、特定外来種に指定されている。
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